11月24日(日曜日)、立花商店街大学第3回目の講義が行われました。もうすぐ師走というこの時期に合わせて「おうちで作れる!おせち料理」がテーマです。講師はフードショップアコーの網内勝功さんと母の恵美子さん、そして裏方さんの予定だった父富士夫さんも飛び入りで、親子3人による講義になりました。今回はおせち料理の代表、黒豆と栗きんとんの作り方をプロから教わります。
勝功さんによると、おせちはもともと端午の節句や桃の節句など中国の行事に出していた料理だそうで、中国では健康のための料理だということです。それが日本に伝わってきて農業の行事と関わりを持つようになり、お正月は体を休めて栄養をつけて農業に備えようという意味になりました。お重箱も鎌倉時代などはかんたんな使い捨てのお弁当箱のようなものだったらしく、とても高価だった砂糖をふんだんに使った黒豆や栗きんとんを保存料理として豪華なお重箱に詰めはじめたのは江戸時代になってからです。
肉食の習慣がなかった日本人にとって豆は重要なタンパク源でした。昔は黒豆以外の豆もおせちに使われていたようですが、黒は縁起のいい色ということでいつしか黒豆になったそうです。会場には昨日から仕込んできたという黒豆が大きな鍋で運ばれてきました。煮汁のレシピはあらかじめ受講者に渡されていて、仕込みの様子がビデオで流されます。黒豆は丹波産で、フードショップアコーでは砂糖は三温糖を使用しているそうです。普通の上白糖でもいいのですが、やはり三温糖は複雑な味わいが出るとのこと。ここで富士夫さんが、鍋を傾けて黒豆を煮るときに出るアクを受講生に見せます。このアクをしっかり丁寧に取らないとエグみが出るそうです。恵美子さんの説明が入ります。「アクはお料理にとって悪です。黒豆に限らずゴボウ、レンコン、人参すべて。アクを丁寧に取るのはお料理の基本です」。
もう一つのポイントは豆を踊らさないこと。火は弱火でコトコト。豆が踊るほど強火にかけるとシワが入ったり破れたり。富士夫さんが鍋をかき混ぜようとすると、すかさず勝功さんが「あまりこういう風に触らないこと」。会場に笑いが起きます。そのあと、アク取りシートの使い方やクギを入れてキレイな色に仕上げる方法が解説されます。くわしくは動画をどうぞ。
続いて大きなさつまいもが出てきました。栗きんとんの餡づくりが始まりました。皮は薄く剥くのかと思ったらかなり厚めにカットします。もったいないので餡に使わない皮の部分は揚げてさつまいもチップにするといいそうです。これも一晩たっぷりの水につけてアクを抜きます。ここでアク抜きをしてから15分位炊いた芋が出てきました。竹串がすっと入る状態になっています。栗きんとんは砂糖をたっぷりつかった料理で昔はお祝い事の時しか出てこないものでした。砂糖をたっぷり使うことで防腐効果がだいぶ高くなっています。受講生から「栗きんとんに使う芋の種類はなんでもいいのですか?」という質問が出ました。フードショップアコーでは鳴門金時を使用していますが、好みのものでもいいとのことです。続いて、芋を潰して裏ごしです。この裏ごしはとても労力がいる作業。恵美子さんはこの裏ごしが嫌で以前は栗きんとんを作りたくなかったそうです。おうちで作る場合はフードプロセッサーかジューサー使うと裏ごし作業がとても楽になります。会場でもフードプロセッサーが使われました。
生地が滑らかになったところで砂糖と栗のシロップを入れて火にかけるのですが、問題は砂糖の量。昔のレシピ通りの砂糖の割合はかなり甘く、砂糖だけは好みで調節するのがいいようです。配られたレシピには芋1kgに対して砂糖330gとなっていますが、今回は半分以下の150gで作っています。ひとつまみの塩を忘れずに。いよいよ仕上げです。栗を3〜4つに切って、いま作った芋の餡で包んでいきます。ここでまたトリビアが。ひとつの栗きんとんに栗はいくつ入れるのでしょうか。おせちの料理は「吉数」から奇数を入れるのが正しいそうで、3つや5つが正解です。ラップを手に乗せ、栗をおき、芋の餡で包みます。会場に来ていた子どもたちも餡包みに挑戦していました。恵美子さんから「いまはおせちも買いに行く時代ですが、わが家のおせちを一品でも二品でも入れていただけたらうれしいなと思います」という言葉で今回の講義は終了となりました。受講生にはおみやげとして、昨日作ったという黒豆ときんとんが配られました。アクを丁寧に取るなど、ちょっとしたひと手間で仕上がりがぜんぜんちがうのですね。やはりプロのお話はためになります。ぜひ、全編を動画でご覧ください。
網内 富士夫
フードショップアコー店長
調理では、主に魚料理を担当。
網内 恵美子
調理では、主に煮物を担当。
網内 勝功
調理では、主に揚げ物を担当。